「充、何があった?」
「……いえ、特に何かあった訳じゃないんです。遥香さんを送り届けている途中に突然数台のバイクに追われて……」
十夜の問い掛けに顔を上げた充くんがたどたどしく言葉を紡いだ。
追われた時の事を思い出しているのか、充くんの表情が少し険しい。
そんな充くんに十夜が再び問い掛ける。
「奴等の顔は見たか?」
「いえ、撒くのに必死で……」
「遥香は?」
「見たんだけど、マスクとかバンダナで顔の半分が隠れてたからハッキリとは分からなかったの」
「……そうか」
二人の返答に黙り込んでしまった十夜。
煌達も同様難しい表情で何か考えている。
それにしても一体どういう事なのだろうか。
遥香さんが狙われた事によって、ついさっきまで考えていたものが全て覆されてしまった。
遥香さんが狙われたのは溜まり場を潰す為の囮だと考えていたけど、遥香さんが狙われたのだとなるとその考えが間違っている事になる。
今回は十夜達も倉庫にいて、遥香さんが追われた事以外何も起きていない。
という事は、遥香さんが目的で追いかけたという事だ。
じゃあ昨日のあのゲームも囮なんかじゃなくて、本当に遥香さんを攫おうとしていたという事?


