開いた扉から飛び込んできたのは、険しい表情を浮かべた冬吾くん。
「……なんだと?」
「今、下にいますっ!」
余程急いで来たのだろう。
荒々しい呼吸を繰り返す冬吾くんは大きく肩で息をしながら一階を指差した。
十夜を含めた全員は冬吾くんの様子にただならぬ事態だと感じ取ったのか、一斉に立ち上がりリビングから出ていく。
あたしはと言うと、起き上がったものの驚愕し過ぎて皆が出ていった扉を呆然と見ている事しか出来なかった。
「失礼します」
「……凛音ちゃん、こんにちは。突然お邪魔してごめんね…」
「いえ……あの、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫。ありがとう。まさか昨日の今日でまた追いかけられるなんて思わなかったからちょっとビックリしちゃった」
十夜達がリビングを出て数分後、十夜達は充くんと遥香さんを連れて戻ってきた。
入ってきた二人は突然敵に追いかけられたせいか疲れ果てていて。
遥香さんに至っては顔色が悪く憔悴しきっていた。
余程怖い思いをしたのだろう。
それでもあたしと目が合った時はぎこちないながらも笑ってくれた。
そんな遥香さんにあたしはよそよそしい対応しか出来ない。
笑い返した笑顔もきっと引きつっていたと思う。
こんな時なのに気の利いた言葉の一つもかけてあげられないなんて、あたしはなんて最低な奴なんだろう。
遥香さんと充くんは壁側の三人掛けソファーに座り、彼方が充くんの隣に腰を下ろした。
その向かいのソファーに左から陽、壱さん、煌。
二人掛けソファーには右側にあたし、左側に十夜が座った。


