煌はリビングを出て十分も経たない内に戻ってきた。
男達を解放するだけだったからそんなに時間はかからなかったのだろう。
「煌、ちゃんと釘刺してきた?」
「……あぁ。もし次同じ様なメールが来ても無視しろと言っておいた」
煌はテーブルの上に置いてあった煙草に手を伸ばし、ケースの中から煙草を一本取り出すと口に咥えた。
そして、ソファーに深く腰掛け、慣れた手付きで咥えた煙草に火をつける。
ユラユラと緩やかに立ち上っていく紫煙。
それを見ていると、不思議と気持ちが落ち着いていくような気がした。
「凛音ちゃん、眠たい……?」
その声と共にふわりと頭に置かれた手。
その手が慈しむように優しく頭を撫でてくれる。
「……うん、少しだけ」
それが凄く心地好くて、眠たくなかった筈なのに自然と瞼が落ちていった。
壱さんの手はいつも優しい。
まるであたしの心を見抜いているかの様に優しく触れてくれる。
こんなに優しいと泣いちゃいそうだよ、壱さん。
壱さんの優しい手に癒されていると、突然玄関の扉がコンコンと鳴った。
「はーい」
陽が返事し、壱さんの手が止まる。
それと同時に閉じていた目が必然的に開いた。
「失礼します!」
陽が扉を開ける前に勢いよく開いた扉。
「勝手に開けてすみません!総長、今、充と遥香さんが何者かに追われて此処へ逃げ込んできました!」


