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「オイ、何で十夜機嫌悪ぃんだよ」


「……分かんない。“D”の事でも考えてるんじゃないの?」


こそっとあたしに耳打ちしてきた煌にそっけなくそう応えると、煌は難しい顔をしながらソファーに背中を預けた。

それを見てあたしも横向きに倒れる。


あたしが倒れたのは、二人掛けソファー。


煌が座っているのは左斜め前にある三人掛けソファーだ。


煌の左隣には彼方がいて、その向かいのソファーには陽と壱さんが座っている。


十夜は説明の後、特等席へ行って煙草を吹かしていた。


煌の言葉から察するに、今の十夜は相当機嫌が悪いのだろう。


それは多分、いや、百パーセントあたしのせいだ。


あたしがトイレに行った後、部屋に戻らなかったから。


ちょうど煌達が来たというのもあるけれど、もし来ていなくても寝室には戻らなかった。


ううん、戻れなかった。

真っ直ぐに目を合わせる勇気がなかったから。



その後、十夜が部屋から出てきた時も目を合わさなかった。


説明の時、二人掛けソファーに並んで座っていても隣を見る事はなくただ頷くだけ。


十夜が機嫌悪いのはあたしのその態度のせいだろう。