そう思っているのに、一度溢れた涙はなかなか止まってくれない。


ボロボロと零れ落ちる涙が両頬を濡らしていく。


それを指で荒々しく拭うけど、結局それも無駄に終わった。


……なんでなんでなんで。

なんで止まってくれないのっ……。



「凛音、そんなに擦るな」


「……っ、」


十夜の手があたしの手首を掴み、擦る指をピタリと止める。


「心配させて悪かった」


そう言うや否や、十夜は後頭部に回した手であたしを強く引き寄せた。


広い胸の中へと閉じ込めた事によって暗くなった視界。


それはあたしの聴覚を過敏にさせた。


十夜の甘い香りに支配され、涙が余計に溢れてくる。


「十夜……」


あたしは皆がいる事も忘れ、十夜の背中に両手を回してギュッと強く抱き締めた。

そして、その温もりに身を任せる。



……ねぇ十夜。

気持ちの整理が出来たら、遥香さんとの事教えてくれる?

十夜の気持ち、教えてくれる?


あたしは本当の気持ちが知りたい。


十夜の、本当の気持ちが知りたいよ………。


その後、何とか落ち着いたあたしは作っておいたカレーを皆に振る舞った。


皆は「美味しい!」と言って食べてくれて、その笑顔に少しだけ気が楽になった。





ご飯を食べ終わったのは23時を回っていて、十夜達はこれから尋問する為に捕らえた“D”の元へ行くと言う。


何時に終わるか分からないと言われたあたしは、「それなら今日は此処に泊まるよ」と言って一人リビングに残った。


今は家に帰るのも億劫で、正直、もう動きたくないから。


頭を使い過ぎて疲れてしまった。

今はもう何も考えずに寝たい。


そう思ったあたしは、頭をリフレッシュする為にもう一度お風呂に入った。