「凛音ーただいまー」
丁度梅ジュースを飲み終わった時、タイミングを見計らったかのように勢いよく開いた玄関のドア。
そのドアの音に過剰に反応したあたしは、もう少しで持っていたペットボトルを落としそうになった。
「あ、皆おかえりー」
ゾロゾロとリビングに入ってくる皆を笑顔で出迎える。
「りっちゃーん。逢いたかったぁ~」
「ちょっ、彼方苦しい!」
部屋に上がるなり、ガバッと覆い被さるように抱き締めにきた彼方。
「りっちゃん~」
「……っ、だから苦しいって!」
──今、ちゃんと笑えているだろうか?
「お、晩飯はカレーか。よくやった」
「……何それ。っていうか助けてよ!」
──声、震えてない?
「凛音、腹減った!」
──ちゃんといつも通りに振る舞えてる?
皆と接しながら脳内を占めているのはそんな疑問ばかり。
リビングに入ってきたのは煌と彼方と陽の三人だけだった。
十夜と壱さんが三人よりも遅いのは別に珍しい事ではない。
壱さんは車を駐車場に停めに行っていて、十夜は下っ端くん達に説明や指示をする為に残っている。
一階に大勢居る時は大して気にならないけど今日は別だった。
だって今、一階には充くん達五人しかいない。
という事は、十夜は五人と話しているという事になる。
充くんに口止めをお願いしたけど、絶対にバレないという確証はないし、何より、相手はあの十夜だ。
少しでも不審な行動や表情をすれば気付くかもしれない。
もしあたしが二人の関係を知ったとなれば十夜はきっとそれについて話しをするだろう。
けど、あたしは遥香さんと十夜の関係についてまだ冷静に話せる自信がない。
だからどうしてもバレたくないんだ。
もう少しだけ、
もう少しだけでいいから時間を置いて欲しい。
気持ちの整理が出来るまででいいから。


