「充くん……」
哀しげなその表情に心配してくれてるんだと分かる。
充くん、本当にありがとう。
……ごめんね。
「それと……」
再び歩き出そうとした時、言いにくそうに零されたその言葉に再度振り返った。
目が合うなり充くんは気まずそうに俯き、続ける。
「……今の凛音さんにこんな事を言うのも何なんですけど、」
「………」
「遥香さんの事悪く思わないであげて欲しいんです」
「充くん……」
「遥香さんも桐谷さんと別れて傷付いていました。……だから、」
「……うん」
分かってる。
分かってるよ、充くん。
遥香さんは好きだったのに別れたんだもんね。
傷付いてて当たり前だ。
「勝手な事ばかり言ってすみません。でも、俺はもうあんな遥香さんを見たくないんです」
「………」
──あんな遥香さん。
それはきっと、鳳皇の中では充くんしか知らない遥香さんの事。
護衛という形で一番近くにいた充くんは、引っ越しした後も関西と海外という遠距離にも関わらず遥香さんを支え続けていたんだ。
充くんにとったら遥香さんはあたしなんかよりも遥かに大切な人。
本当ならあたしを嫌悪していてもおかしくないのに、充くんは普通に接してくれた。
そして、励ましてくれた。
優しい人。
「……充くん。あたし、遥香さんの気持ち分かるから……」
好きな人と離ればなれにならなきゃいけない時のツラさは身をもって知っている。
「だから、嫌いになんてなれないよ。……ただ、不安なの……ってごめんね。こんな事言われても困るよね。じゃあ」
「凛音さん……!」
充くんの呼び掛けを振り切って、小走りでその場から立ち去った。


