特に気の利いた返事もせず早々と電話を切ったあたしは、「はぁ……」と溜め息を吐き出した。
その幾度となく吐き出される溜め息にまた気分が落ちていく。
「凛音さん、桐谷さん達帰ってくるんですか?」
「あ、うん。もうすぐ帰ってくるって」
「じゃあ早く二階に戻った方がいいですね」
そう言うや否や腰を上げた充くんは、「どうぞ」と言ってあたしに右手を差し出してくれた。
「ありがとう」
お言葉に甘え、その手を取って立ち上がる。
「行きましょうか」
ふわりと微笑んだ充くん。
その後に続いて部屋から出た。
「凛音さん、ツラい事ばかり聞かせてすみませんでした」
「ううん!こっちこそごめんね。教えてくれてありがとう」
部屋の前で申し訳無さそうに頭を下げる充くんに慌てて手を振ると、ごめんねと言って謝る。
「充くん、皆には……」
「分かってます。凛音さんは気にしないで下さい」
「……ありがとう」
あの時一緒に居たのが充くんで本当に良かったと思った。
充くんじゃなかったら、あたしはきっと二人の事をよく知らないまま悩んでいた。
過去を知っても解決策なんて一向に思い浮かばないけれど、知らないよりかは全然いい。
「じゃあ、充くん、あたし上行くね」
「はい」
最後ぐらいは、と思ったあたしは精一杯の笑顔を作り、手を振りながら歩き出す。
「凛音さん……!」
数歩進んだ所で呼び掛けられ、再度振り返る。
「元気出して下さい」
沈痛な面持ちの充くんと目が合ったと思えば、弱々しい声でそう言われた。


