「……っ、充…くん……?…ごめん、ボーッとしてた」
充くんに肩を揺らされ、意識が現実に戻る。
「いえ、それよりも凛音さん、さっきから携帯が鳴ってるんですが……」
「えっ!?」
充くんの言葉に耳を澄ませば、確かにポケットからバイブ音が聞こえていて。
震え続けている携帯をポケットの中から取り出すと、
「十夜……」
画面に表示されているのは十夜の名前だった。
その名前を見た瞬間、心臓が普段とは違う鈍い音を立てる。
ざわつく胸中。
思わず胸元で右手をギュッと握り締めた。
「あの……凛音さん、俺が出ましょうか?」
「え?……ううん、大丈夫。ありがとう充くん」
そう言うと、覚悟を決める為にスゥと息を吸い込み、意を決して受話ボタンに指を乗せた。
素早く切り替わる着信画面。
それを見て、また心臓の音が五月蝿いぐらい速くなった。
「──もしもし」
緊張で声が震える。
それが十夜に伝わっていないかと少し焦ったけど、
『──もしもし?凛音か?』
どうやらその心配は無さそうだった。
普段と変わらないその声色に「うん」と小さく返事し、聞こえないように溜め息をつく。
『悪い、待たせた。今から帰る』
「……うん、分かった。気をつけて帰ってきてね」


