遥香さんちに……。
充くんの言葉を聞いて、どうしようもなく胸が痛んだ。
何とも言えない感情が再び思考を乱していく。
脳裏に浮かぶのは遥香さんちに入っていく十夜の後ろ姿。
遥香さんを送った、“あの時”の光景。
「………っ」
堪らず、手の甲で口元を押さえた。
それに気付いていない充くんは更に続ける。
「それなのに何故別れたのか」
「………」
「これは俺の憶測なんですが……。凛音さんは遥香さんが留学していたの知ってますか?」
「……うん、知ってる」
「俺はそれが原因なんじゃないかと思っています」
「え……?」
どういう、事?
「実は、遥香さんの留学は夏前からと決まっていたんです」
「夏前?」
「はい。それをある事情で遅らせた」
「……ある、事情?」
「って言っても夏休みからでも大丈夫だったみたいですけど、遥香さんは夏休み前から行く予定にしてたみたいです。
けど、“ある事件”が起きて、出発を夏休みギリギリに変更した」
“ある事件”……?
って一体なに?
「桐谷さんが重傷を負ったんです」
「………っ、」
重、傷……?
それってもしかして、
「あの、脇腹……?」
「……はい」
充くんは返事をした後、何故か気まずそうに眉を潜め、顔を逸らした。
その意味有りげな表情に首を傾げる。
「……充くん?」
「いえ、凛音さんは……」


