Ri.Night Ⅳ


遥香さんちに……。


充くんの言葉を聞いて、どうしようもなく胸が痛んだ。


何とも言えない感情が再び思考を乱していく。


脳裏に浮かぶのは遥香さんちに入っていく十夜の後ろ姿。

遥香さんを送った、“あの時”の光景。



「………っ」


堪らず、手の甲で口元を押さえた。


それに気付いていない充くんは更に続ける。



「それなのに何故別れたのか」


「………」


「これは俺の憶測なんですが……。凛音さんは遥香さんが留学していたの知ってますか?」


「……うん、知ってる」


「俺はそれが原因なんじゃないかと思っています」


「え……?」


どういう、事?


「実は、遥香さんの留学は夏前からと決まっていたんです」


「夏前?」


「はい。それをある事情で遅らせた」


「……ある、事情?」


「って言っても夏休みからでも大丈夫だったみたいですけど、遥香さんは夏休み前から行く予定にしてたみたいです。

けど、“ある事件”が起きて、出発を夏休みギリギリに変更した」



“ある事件”……?

って一体なに?



「桐谷さんが重傷を負ったんです」


「………っ、」


重、傷……?


それってもしかして、


「あの、脇腹……?」


「……はい」


充くんは返事をした後、何故か気まずそうに眉を潜め、顔を逸らした。


その意味有りげな表情に首を傾げる。


「……充くん?」


「いえ、凛音さんは……」