「あっぶね!お前向こうから下りろよ!」
「お前が向こう行けって!」
ヤバい!奴等が来る!
男達の声に直ぐ様振り返ると、男達はビビりながらも少しずつ斜面を下っていた。
モタモタしていると直ぐに追い付かれてしまう。
けど、この先はあたしでも下りられない程の急な坂。
と言うより、最早崖に近かった。
左右を見回しても、崖は工場に平行していて下りる所など見当たらない。
目的地に着く最短距離だと思って急斜面を滑り降りたけど、どうやら検討違いだったようだ。
どうする?考えろ、凛音。
早くしないと奴等が追い付いてくる。
どうすれば。どうすればいい?
どうすればこの工場に辿り着ける?
どうすれば───あ。
視界に映る工場の屋根を見て、“あること”を閃いた。
足元に見えるのは崖。
そして、前方には工場の屋根。
距離にして約二メートル程。
跳べるかもしれない。
そう。
“あること”とは、此処から工場の屋根へ飛び移る事。


