……え? けしかけた?


貴兄の言葉が鋭利な刃物となって襲い掛かる。


その刃物に追い立てられる様に更に一歩、後ろへと後退した。


瞬間。



「……っ!!」



カランカランカラン……。


足元にあった“何か”を思いっきり踏んでしまった。



「誰だ!!」


中田の声とほぼ同時に後ろへと倒れていく身体。


予想外の出来事と冴えない思考のせいで受け身が取れない。



「っぅ、」


何も出来ないまま地面へと思いっきり叩きつけられ、強烈な痛みが尾てい骨を襲う。


それと同時だった。


今まで覗いていた扉が左右に勢いよく開いたのは。



ヤバい!


そう思った時にはもう遅かった。




「お前……凛音!?」


信じられないと言った表情であたしを見下ろしているのは中田。


半開きになったその口からは「何故」と独り言の様に零れ落ちる。


けれど、あたしの耳にはその言葉なんて微塵も届いていなかった。


あたしの視線は既に中田の後方、


貴兄へと向けられていたのだから。




貴兄の隣には優音、そしてその後ろには下っ端らしき男が二人いた。


各自各々の表情であたしを見下ろしている。