Ri.Night Ⅳ


「桐谷さんは前からそうだった」

「……前から?」


ってどういう意味?


「付き合っている当時、遥香さんが鳳皇に出入りする事は滅多になかったんです」

「え……?」


「いや、無かったと言った方がいいかもしれません」



……ちょっと待って。

どういう事?

二人は付き合ってたんだよね?


だったら遥香さんは“凰妃”だった筈だ。

敵から狙われる対象になるのに何故倉庫に居なかったの?



「二人が付き合ってた事を公表していなかったからです」


「……公表、してなかった?」


まるであたしの心の声を聞いていたかのようにそう応えた充くんは、握っていた拳に力を込めるとあたしの瞳を真っ直ぐ見据えた。


「はい。だから遥香さんは鳳皇に入らなかった。いえ、入れなかった。

千暁達が遥香さんの事を詳しく知らないのはそのせいです。下の奴等が知っていたのは、桐谷さんに恋人がいるという事だけ。

勿論、それは口外禁止でした」



──そうか。

だからさっき千暁くんは『何も聞かされてないから』って言ったんだ。


「なんで公表しなかったの……?」


公表しない理由が分からない。


何故──?



「それは……遥香さんを危険な目に合わせない為です」


「……っ、」


危険な目に、合わせない為……?


「桐谷さんに聞いた事があるんです。遥香さんの護衛を任された時、……その時はまだ付き合っていませんでしたが、『遥香を危険な目に合わせたくないからだ』と言われました」

「………」

「公表すれば常に危険が付きまとう。それは桐谷さん自身身をもって知っていた。だから公表しなかった」