智広くんは悪くない。
頭ではちゃんと解ってる。
けど、智広くんの声が、
紡ぎ出される言葉が怖くて怖くて仕方無いんだ。
あたしの知らない真実が飛び出してくるような気がして、身体が無意識に反応する。
……怖い。
二人に会うのが怖い。
今のあたしには平然を装うなんて芸当、到底出来そうにない。
あたしはそんなに強くない。
「凛音さん、ちょっと此処で待ってて下さい」
………え?
不意に落ちてきたその声にゆっくり顔を上げると、広い背中がドアの向こうへと消えていくのが見えて。
「直ぐ戻ってきます」
一分もしない内に戻ってきた充くんはあたしの手からお盆を奪い取ると、それを持ってまた部屋の中へと消えていった。
その間、あたしはそこから一歩も動かず、定まらない視線で部屋を出入りする充くんをただ眺めているだけ。
千暁くんと智広くんは声を発したきり部屋から出てこない。
それは充くんに止められている所為なのか、それとも気まずくて顔を合わせられない所為なのか。
どちらかは分からないけど、出てこない事に少なからず安堵した。
だって、どんな顔をして二人に接すればいいのか分からないから。
本当は今すぐにでも十夜と遥香さんの事を聞きたい。
けど、二人は十夜達の事を詳しく知らないようだった。
だから聞く事が出来ない。


