運ぶのを手伝うと言ってくれたのは充くん。
少し気恥ずかしさを感じながらも二人並んで二階へと上がった。
充くんは初めて会った時とは違い、喋り方も雰囲気も優しい。
同じ年だから敬語じゃなくていいと言っているのに、
「桐谷さんの彼女さんにタメ口なんて無理です」
と言って、決して首を縦には振る事はなかった。
カレーの用意をしている間も会話が途切れる事はなく、終始穏やかな空気が流れていた。
言い方はおかしいけれど、どうやら今の充くんが本当の充くんみたいだ。
初めて会った時の充くんは遥香さんの事があったせいか少し人格が変わっていたようで。
簡単に言えば壱さんが堕天使壱様に変身するのと同じなんだろう。
ホラ、キレると人格が豹変するという。
普段優しい人程キレた時は怖いって本当だったのね。
「充くん、これ持っていって貰っていいかな?」
お盆を持ち上げ玄関に待機中の充くんを見ると、充くんは携帯に視線を落とし指を動かしていた。
「あ、すみません!持ちます!」
「ううん、メールしてたんでしょ?終わってからでいいよー」
「いえ、もう大丈夫なんで」
少し慌てた様子で両手を差し出してくれた充くん。
いいのかなと思いながらもお言葉に甘えてお盆を持っていった。
あたしももう一つのお盆を持ち、玄関に向かう。
律儀にドアを開けて待っていてくれた充くんに「ありがとう!」とお礼を言うと、足元を見ながら慎重に歩き出した。


