Ri.Night Ⅳ


「ホラ!カレー作っとくから早く行って!煌と壱さん待ってるから!」


荒々しい口調でそう言うと十夜の胸板を強く押し、甘い香りの中から素早く抜け出した。


もう甘さも何もあったもんじゃない。


っていうか、カレーが食べたいんなら普通に言ってよね!

抱き締めたりなんかして無駄にドキドキしちゃったじゃない!



「オイ」


「はーい、いってらっしゃーい。怪我には気を付けてねー」


何か言いかけたけど満面の笑みでスルー。


ヒラヒラと手を振り、早く行けと言わんばかりに肩を押す。


そんなあたしの態度に十夜は不満げに顔をしかめていたが、その後、一向に嘘臭い笑顔を崩そうとしないあたしに降参したのか、「行ってくる」とだけ言って部屋から出ていった。


パタン、と小さな音を立てて締まるドア。


「行っちゃった……」


急に訪れた静寂に寂しさが集い、張り付けた笑顔が一瞬で消え去る。


……やっぱり一人は寂しい。


無理矢理追い出しといてなんだけど、やっぱり居なくなると寂しい。


静けさの漂うリビングを見て余計にそう感じた。


「カレーの前にお風呂入ろう」


無意味に呟く独り言は寂しさを紛らす為のもの。


「……皆、怪我しないでね」


ソファーに座るみんなを思い出して、まるでそこに居るかのように小さく呟いた。












「十夜遅ぇよ!……って何かあったのか?」


「……何も」



“カレー食いたい”


それが十夜の虚言だったなんて、この時のあたしには知る由もなかった。