走っているせいでハッキリとその外観は確認出来ないけど、確かにこの坂を下った所に建物は存在していた。
だけど、まだアレが工場だと断定した訳ではない。
でも、心の何処かであの建物が抗争をしている工場だと確信していた。
……やるしかないか。
そう心中で小さく呟いて、再度左方へと視線を落とす。
目指すは真下にある建物。
よし!!
目的地を定めて気合いを入れる。
そして、スピードを落とすことなく生い茂る木々目掛けて突っ込んでいった。
「は!?マジかよ!!」
「この急斜面を滑り降りる気か!?」
あたしの行動に驚き、声を上げている男達。
それもその筈。
あたしが突っ込んだところは当然道などある筈もなく、急斜面プラス何メートルにも及ぶ木々しかなかったから。
その名の如く、本当に滑り降りるかの様に急斜面を駆け下りる。
内心物凄くコワイ。
だけど、この危機的状況を回避するには一か八か賭に出るしかなかった。
左下に建物があるのに、今走っている道は何十メートルも続いているから。
きっと山道だからカーブを繰り返して下っていくんだろう。
いくらあたしが体力有り余っているからと言っても、流石にこの下り坂を走って下っていくのはキツい。
此処から見てほぼ真下と言っていい程の所に目的地があるんだ。
多少怖くても急斜面ぐらい頑張って滑り降りますよ、うん。
「お前等行くぞ!」
「ゲッ。マジかよ」
「お前先行けよな!」
どうやら敵さんは急斜面を滑り降りる勇気がないらしい。
全く肝っ玉の小さい奴等ばかりだこと。


