「さっき助けてくれた時敬語だったから変だなって思ったんだよね。遊大くんと一緒の時は違ったから」


「あ……」


そう言えばそうだ。


前に会った時は遊大の友達として接したけど、今回は十夜の幼馴染みだって知ってたから自然と敬語になっていた。


あんな状況だったのに違和感を感じるなんて……。この人凄い。



「凛音ちゃん、敬語はやめて。 ね?」

「えっ。そんな……!」


敬語をやめるなんて、そんなの絶対に無理!


「あの、それはホントに──」


「ホントビックリしちゃった!凛音ちゃん喧嘩強いんだね~」


コロコロと変わる遥香さんの表情に何も言えなくなって黙り込む。


何故だろう。この人と話しているといつもの自分じゃいられなくなる。

色んな感情が渦巻いて自分が保てない。


遥香さんはこんなにも優しく話し掛けてくれるのに、

こんなにも綺麗な笑顔で笑い掛けてくれるのに、心の底から笑い返す事が出来ない。


あたしはなんて醜いんだろう。


十夜の彼女はあたし。

それなのにどうしても不安が消えない。


遥香さんは凄いと思う。

本当に凄い。


もし好きな人に彼女が出来たら笑ってなんかいられないし、好きな人の彼女になんて愛想良く出来ない。


だからかな。

遥香さんが怖くて堪らない。


強いこの人が怖い。

女として強くて魅力的な遥香さんには敵わないって、そう思ってしまうから。