「そ。ありがと」
それを聞いたあたしはすんなり男の腕を解くと、ぐるりと首を回して目的地に向かって歩みを進める。
すると、視界の端でさっきまで威勢の良かった男が一目散に走って行くのが見えた。
そんなに恐かったのだろうか。
凛音ちゃんショック。
早々と倉庫の中へと消えていった男にガックリ肩を落として、トボトボ歩く。
まぁいっか。
そんなことより早く行かなきゃ。
そう思った時だった。
バンッ!!
「ひゃあ!」
突然、背後から扉が開くような音がして、慌てて振り返った。
すると、案の定、倉庫の扉が開いていて。そこから五、六人の男達が飛び出してきた。
う、嘘でしょーー!!
どうやらさっきの男は逃げ帰った訳ではなく、仲間を呼びに行ったらしい。
っていうか、倉庫の中に人が居るなんて聞いてないし!!
「アイツだ!テメェ、さっきはよくもやってくれたな!!」
仲間を呼んで気を大きくしたのか、あたしを指差しながら凄い形相で走ってくるさっきの男。
ちょ………!!
男の指差しによってその場の全員から鋭い視線を受ける事になったあたしは、ジリッと一歩後ろに後ずさった。
い、いやいやいや!
あたし、場所聞いただけですから!
そりゃちょっと腕捻ったけどさ。
そんなのほんのちょっとじゃない!
っていうかあたし逃げなきゃヤバいんじゃ!?
そう思った時にはもう足が勝手に方向転換していて。
気付けば男達とは逆方向へと走り出していた。
「テメェ、待ちやがれ!!」
当然追いかけてくる男達。
あー!もう!勘弁してくれ!!


