「ちょ、十夜!?」
『……え?』
駆け寄った遥香さんには目もくれず、何故か止まる事なく歩みを進める十夜。
な、なんで?
漆黒の瞳は真っ直ぐあたしを捉えていて。
余りにも真剣なその瞳に動くどころか瞬きすら出来ない。
『……え?』
目の前に来たと思えば突然手を引かれ、リンの姿にも関わらず十夜は何の躊躇いもなくあたしの肩を抱き寄せた。
「煌」
「分かった」
『ちょ……!』
一言だけそう発すると、再び歩き出そうと肩を引き寄せる。
流石にこの姿でこれはマズイだろうと思い、足に力を入れるがガッチリと肩を固定されているせいでそれも敵わず。
結局無駄な抵抗で終わり、どうすればいいのか分からないまま十夜に連れて行かれた。
『ちょ、十夜?』
連れて行かれたのは見覚えのある部屋。
それは“あの時”連れて来られた部屋だった。
鳳皇を抜けようとした時、
“俺から離れるな”
そう言われて引き止められた部屋。
『……十夜?』
カーペットに無理矢理座らされ、十夜が目の前に腰を下ろす。
下から覗き込むように十夜を見上げれば、固く結ばれていた唇が緩み、少しだけ表情が崩れた。
「二人でいる時ぐらいはお前の声が聞きたい」
『……へ?』
その言葉と共にそっとあたしの両頬を包み込んだのは十夜の大きな手。


