『……え?』
その声に振り返れば、
『……っ十夜!?』
数メートル先に此方へ向かって歩いてくる十夜と煌の姿があった。
なんで!?十夜刺されたんじゃ……!!
悠然と歩いてくるその姿はついさっき刺されたとは思えない程軽やかで。
本当に、十夜……?
幻かと思い、何度も瞬きを繰り返しその姿を確認した。
揺れる漆黒の髪やその間から見え隠れしている瞳。
それは間違いなく十夜本人で。
十夜……。
十夜だと確信した途端、一気に身体の力が抜け落ちた。
ホッと安堵の溜め息を洩らし胸を撫で下ろす。
……良かった。ホント良かった。
刺されてなくて本当に良かった。
でも、あの時は確かに刺されたように見えたのになんで……?
刺された筈の腹部に視線を落とすと、脇腹辺りの服が無残にも切られていて、その切り口からは一筋の傷が見えた。
そこから流れ出る血が服の裾辺りを真っ赤に染めている。
切れてるという事は刺される寸前で避けたんだ。
っていうかなんでそんな傷で普通に歩いてるの!?
『とぉ──』
「十夜!血が……!」
駆け寄ろうと足を踏み出した時、傷に気付いた遥香さんが先に走り出してしまった。
『………』
出遅れたあたしは何とも不恰好な状態で立ち止まり、その後ろ姿を見つめる事しか出来ない。
……やっぱり二人には何かあるの?
駆け寄る遥香さんの姿を見て、ふと脳裏に浮かんだのはあの男の言葉。
“蒼井 遥香は黒皇のモノらしいぜ?”
十夜のモノって一体どういう意味……?


