「でも十夜が!!」
「いいから奴等を捕まえろ!絶対逃がすなっ!!」
「……分かった。陽、行くぞ!」
煌の指示を受けた陽と彼方が声を荒らげながら動き出す。
二人の足音が聞こえた時にはもう白煙に包まれていて、前方はおろか、左右後方どこを見回しても真っ白な状態だった。
「お前はそこから動くな!」
『煌……!』
「貴音、奴等を頼む!」
「分かった!」
口を挟む暇もなく散っていく二人。
『煌……!!』
こんな所で座り込んでいる場合じゃない。
十夜の元へ行かなきゃ。
今すぐ十夜の傍に行かなきゃ……!!
「きゃっ……!!」
「……痛っ、」
煌の後を追おうと再び足に力を入れた時、前方から聞こえてきたのは遥香さんと葵さんの声。
そうだ。遥香さんと葵さんがまだ捕まったままだったんだ。
まさかアイツ等、二人を連れ去るつもりでこの煙幕弾を……!?
何処まで用意周到な奴等なんだ。
まさかこんな事までするなんて。
最早頭の中は破裂寸前。
刺された十夜。
連れ去られようとしている遥香さんと葵さん。
その両方が頭の中でぶつかり合い、冷静な判断が出来ない。
『……っ、十夜、』
けど、やっぱり二人に勝(マサ)ったのは十夜だった。
二人には悪いけど、あたしは何よりも先に十夜の元へ行きたい。
だって、今もまださっきのあの光景が脳裏に焼きついているから。
腹部に刺さったナイフ。
歪んだ十夜の横顔。
それが、脳裏に焼き付いて離れない。


