Ri.Night Ⅳ


その声と共に振り上げられた男の右手。


男の手にはバタフライナイフが握られていて。


その剣先は迷い無く、一直線に十夜に向かって振り上げられた。


『十夜!!』


止めようと手を伸ばすけど間に合わない。



──逃げて。

逃げて十夜っ……!!



「……っ、」


『十夜!!』



十夜の身体が微かに右に揺れ、音も無くピタリと止まった両者の身体。



……嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ!!



『十夜!!』


視界に映るその光景に、有り得ない程声が震えた。



腹部へ消えた剣先。

歪む横顔。

男の右手首を掴む十夜の両手。



その光景は一番見たくないと願っていたもので。



『う、そだ……』



目の前で起きた衝撃的な光景にフッと足の力が抜け落ちた。


崩れるようにその場へ座り込む。



「十夜!!」

「嘘だろ!?十夜!!」



後方から響く陽や彼方の叫声。


それはこの狭い空間に嫌という程良く響いた。




「……チッ」


「リンくん!とぉ──!」


「もう此処に用はない」



遥香さんの叫声を遮ったのはキョウの声。



『なっ!?』

「クソッ!」


その声が耳に届いたのと同時に、突如目前へと巨大な白煙が迫ってきた。


それはみるみる内に天井へと舞い上がっていく。


嘘、でしょ……?


十夜に気を取られていて全く気付かなかった。


「チッ。煙幕弾か」

「彼方!陽!出口を塞げ!!奴等を逃がすな!!」


まさか煙幕弾を投げられていたなんて。