「俺等は凛音に危害を加えなかったからな」
「加えてたらお前等もタダでは済まなかっただろうよ。それにしても馬鹿な奴等だよな。よりにも寄って十夜の目の前で凛音に手を出すなんて」
「十夜だけじゃねぇよ。十夜がいなかったら俺が奴等を潰してる。それをアイツに譲ってやってんだ。手加減してもらっちゃ困る」
「……ったく、相変わらずのシスコンだな」
音量こそ小さいものの、この張り詰めた空間の中で普段と変わらない口調で喋る二人。
煌に至っては愉快そうに小さな笑みまで浮かべている。
ホント緊張感のない二人だ。
この一触即発状態を目の前にして笑っていられるなんて、この二人は一体どんな神経をしているんだろう。
あたしなんかさっきから心臓が煩くて煩くて仕方ないのに。
「いい加減に──」
──ピリリリリリ……。
十夜がそう言葉を発した刹那、まるで遮るように鳴り響いた携帯の着信音。
この着信音……?
そう。その着信音には聞き覚えがあった。
それは──
「カイ、時間だ」
キョウとかいう男の着信音。
……っ、カイって……。
その名前を何度も聞いていたあたしは誰よりも早く反応し、直ぐ様蹲っている男へと視線を走らせた。
俯いたままの男はベストの内側へと右手を突っ込んでいて。
──まさか。
その姿を見た瞬間、嫌な予感が胸中を襲った。
「──やっとかよ。待ちくたびれたっつーの」
『……十夜っ!!』
けれど、叫んだ時には既に遅く。
男の右手はベストから引き抜かれていた。
「──バイバイ。総長サン」


