そう言った瞬間、十夜の瞳に鋭い光が走り抜けたような気がした。
纏う空気が鋭さを増していき、男に向けて威嚇するように放たれる。
「おー怖っ。っていうかそんなに蒼井 遥香が大事だったら手元の置いときゃいいのに。なんで──」
「黙れ」
威圧感溢れる十夜の声色とは反対に、まるで馬鹿にしているかのような軽い口調。
正反対とも言えるその二人の間には見えない火花が散っていて。
どちらか一歩足を踏み出せばその拳が交える事になると誰もが確信していた。
『……大事』
無意識に口から零れ落ちたのは、さっき男が十夜に向けて言った言葉。
「何?お前蒼井 遥香の事好きなの?」
『……っ』
どうやら男に聞こえてしまったらしく、男はあたしの耳元に唇を寄せた後、囁くようにそう問い掛けてきた。
耳に触れる男の吐息に背筋がぞくりと身震いし、鳥肌が立つ。
「やっぱりな」
何をどう勘違いしたのか、ククッと愉しそうに笑う男。
「でも残念だったな」
……残念?
「蒼井 遥香は黒皇のモノらしいぜ?」
『……え?』
黒皇のモノ……?
男の言葉に眉を引き寄せた、その時。
「カイ!!黒皇が来るぞ!避けろ!」
「なっ!?」
後方から聞こえたのはキョウの声。
直ぐ様視線を上げると、そこには怒りのオーラを纏った十夜の姿があった。
「──どうやら死にてぇらしいな」


