「お前、名前は?」
「い゙っ……!」
突然掴まれた髪の毛。
ピンで留めていたお陰でウィッグが外れる事はなかったけど、引っ張った事によってピンが髪を引き上げ、頭皮に激痛が走った。
「……何だコレ。カツラか?」
ヤバイ。バレた。
毛質で気付いたのか、それとも引き上げた拍子にウィッグがずれたのか。
どちらか分からないけど、この髪の毛がウィッグだとバレてしまった。
冷や汗が一筋、背中を伝う。
『はな──』
そう言いかけた時。
「リン!!」
バンッと勢い良く開いた扉から、鳳皇幹部、そして貴兄と慧くんが店内へと雪崩れ込んできた。
「十夜!!」
「十夜さん!!」
遥香さんと葵さんが十夜を呼ぶ。
『十夜……』
あたしは背中から受ける圧迫感のせいで上手く声が出ない。
「──リン」
その呟きと共に十夜の視線があたしと男に向けられて、目が合った瞬間、十夜の目が鋭く細められた。
「……テメェ、生きて帰れると思うなよ」


