今の状況に頭がついていかない。
周りに視線を走らせれば店内はいつもと変わらず落ち着いていて、特に荒らされた様子もなかった。
けど、肝心の雷さんの姿が無い。
『……お前等は誰だ?雷さんは?雷さんは何処にいるっ!?』
此処は雷さんのお店。
店主である雷さんしかお店の鍵を持っていないのに、その雷さんがいないというのはどう考えてもオカシイ。
一体何処に……?
「雷さん?そこに居るじゃん。お前のう・し・ろ」
『なっ……!?』
クスクスと笑う男から目を逸らし勢いよく振り返ると、
『雷さんっ!?』
男の人が一人、壁に背を預けて座り込んでいた。
店内が薄暗いせいもあってかハッキリと顔は見えないが、その人は確かに雷さんだった。
後ろに纏められた髪の毛が何よりの証拠。
『雷さんっ!!』
直ぐ様立ち上がり、雷さんの元へ駆け寄ろうと足を踏み出す。
「おっと、させねぇよ?」
けど、一歩踏み出した所で腕を引かれ、身体が後ろへと傾いていった。
直後、腕を離されたかと思えば今度は蹴りが飛んできた。
『クッ……!』
「リンくんっ!!」
何とか寸前で交わしたけど、止まらぬ攻撃に雷さんの所へ行く事は適わず、そのまま応戦せざるを得なくなったあたしは男に向けて回し蹴りを繰り出した。
「──カイ、止めろ」
「……何だよキョウ、止めるなよ」
何度か攻防を繰り返した後、カイとかいう男を制したのはテーブルに座る男。


