そんな……まさか雷さんがいないなんて。
十夜が雷さんのお店に行けって言ったから、てっきり開いてるものかと思っていた。
「リンくん、どうしよう!?」
『……っ、』
泣きそうな遥香さんに焦りが募る。
……っどうする?十夜に電話する?勝手に動いたら駄目だよね?
あぁもう、頭が混乱し過ぎてどうすればいいのか分からない。
何が良くて何が駄目なのか。
頭の中がグチャグチャで何も考えられないよ。
「リンくんっ!追っ手が……!」
神様は何処までも意地悪らしい。
葵さんに腕を引っ張られて振り返ってみれば、左右両方から十数人の男達が歩いてきていた。
まるで獲物を追い詰めた肉食獣のようにジワリジワリと歩みを進めてくる男達。
ゆるりと引き上げられた口角。
そして、胸元で合わせられた拳。
それは今か今かと出番を待ち構えているかのように見えた。
「リンくん……」
『………』
やるしかない、か。
グっと拳に力を込め、意を決して足を踏み出そうとした───その時。
「えっ!?」
ガチャリ、と今までビクともしなかったドアが突然開いた。
「リンくん、ドア開いた!」
泣きそうな表情から一変し、救われたとでも言うように満面の笑みを浮かべる遥香さん。
……ちょっと待って。雷さん中にいたの?
いたのになんで今まで開けなかったの?
……なんで?
……っ、まさか、
まさか……!!
『遥香さん!入ったら駄目だ!!』


