「──テメェ、その人達を何処へ連れて行く気だ」


『……っ』


立ち上がった直後、背後から聞こえてきたのは怒りを含んだ重低音の声。


直ぐ様振り返ると、視線の先には栗毛の男と赤髪の男が立っていて、まるで獲物を狙う猛獣のような瞳であたしを睨んでいた。



この二人……?


さっきの言動といい、この突き刺すような瞳といい、彼等は明らかにあたしを敵対視している。


ということは彼等は敵ではない?



「テメェ、その手離せよ!」


二人には遥香さん達を連れ去る敵にしか見えないのか、威嚇するように牙を剥いてくる。


「充くん!この人は敵じゃないの!私達を助けてくれたこの人は……」


そんな彼等に説明をしてくれた遥香さんだが、途中で口を噤んでしまった。


それはきっと、遥香さん自身もあたしが何故此処に居るのか理解出来ていないからだろう。



“リン”は遊大の友達。

遊大を知らない彼等にそれを説明してもきっと理解して貰えない。


だから遥香さんは口をつぐみ、あたしに助けを求めたんだ。



『俺は十……、鳳皇総長に頼まれて此処へ来た。獅鷹とも関係がある』


遥香さんと葵さん、二人に見つめられたあたしは此処に居る理由を簡単に説明した。


「……うそ。十夜と?それに獅鷹って……遊大くん?」