十夜達がいない今、闘えるのはあたししかいない。


けど、二人を護りながら闘う事なんて出来るのだろうか。


──いや、闘うしかないんだ。


あたしは鳳皇の片割れ、“鳳凰妃”。

皆と共に闘うと誓った。



「い、やっ!!離して……っ!!」

「遥香っ!!」






『──その人から手を離して貰おうか』



黒皇の敵は凰妃の敵。



『相手なら俺がしてやるよ』



敵は全て排除する。


それが鳳凰妃であるあたしの役目。




「テメェ、何も──」


『お前に名乗る義務はねぇよ』


「なっ!?」


そう言うや否や、地を蹴り上げたあたしは素早く男の左腕を捻り上げ、空いた懐に膝を突き入れた。


そして、よろめいた男の左足を払い、地面へと沈める。



「……は?」


余りにも一瞬の出来事で、何が起こったのか理解出来ていない男。


目を見開き、尻餅をついているその姿は格好悪い事この上ない。



『来いよ。お前の目的はこの女(ひと)を連れ去る事だろ?』


そんな男を冷めた目で一瞥し、男の隣に居た金髪の男へと目を向ける。


ジリジリと後退りするその姿は明らかに怯えているけれど容赦はしない。確実にトドメを刺す。



『どうした?相手してやるって言ってんだよ。早く来いよ。……それとも、諦めるか?』