「あ?お前誰だよ?」


振り返った男は足を止め、訝しげな顔であたしを見た。


警戒心剥き出しの目。


当然だろう。

見知らぬ男に突然話し掛けられたのだから。



『俺も女を捜してる』


「あ?あぁ、仲間だったのか。悪い。俺まだ全員把握してなくて」


『いや。それよりも早く行くぞ。場所は?』


あたしを仲間だと思い込んでいる馬鹿な男。


これでいい。この方法が一番早く遥香さんに辿り着く方法だから。


闇雲に捜すよりもよっぽど効率が良い。



「他の奴からの情報ではこの先にあるパーキング付近に居たらしい」

『そうか』

「お、おいっ!待てよ!」



男の口からそう聞くや否や風を切るように走り出したあたしは、背後から投げ掛けられた言葉に返事どころか振り返りもしなかった。


あたしの脳内にはもう、“パーキングに居る”という言葉しか存在しない。


道なりに真っ直ぐ走っていくと、来た道よりも少し横幅の広い車道に出た。


左右に首を振ればそれらしき男達が数人いて、周囲をキョロキョロと見渡している。


中には携帯を片手に走っている者もいた。


その中に一人、逆方向を指差している男を発見。


直ぐに走り出したところを見ると、どうやら奴等の捜し人は指を差した方向に居るらしい。


あたしも直ぐ様男達の後を追う。




十字路を右に曲がると、男達の背中が見えた。


曲がる直前、左方と正面から二、三人の男達が走ってきているのが見え、遥香さんが此方に居るのだと確信したのと同時に一抹の焦りが生じた。


このままいけば遥香さんに辿り着く。


だが、同時にコイツ等と対峙しなければいけなくなる。


此処に居る連中だけでも十人弱。


他にもまだまだ居るだろう。