プツンと電源ボタンを押し、携帯をジーパンのポケットに入れる。


「妃奈、ごめんね。直ぐに優音が来てくれるから此処で待ってて」


「うん。凛音ちゃん、気を付けてね」


「ありがと。落ち着いたらまた連絡するから!ホントごめんね!」



妃奈に荷物を預けて、雷さんのお店へと向かう。



遥香さんは雷さんのお店の近くにいると言っていた。


それまで捕まらなければいいけど。


っていうか、何で遥香さんが狙われているのか分からない。


十夜……いや、鳳皇と関係しているから?


いや、遥香さんが鳳皇と関係している事は誰にもバレていない筈。


じゃあ何で……?


……あ。

一つだけ思い当たる節があった。


もしかしたら“アレ”かもしれない。


あたしが鳳皇に戻った日、繁華街で遥香さんと葵さんを助けたこと。


けど、何故遥香さんが鳳皇と関係していると分かったのだろうか。


だって、あの時はあたしも居た。


居なかったと言うのなら未だしも、あの状況からして遥香さんが鳳皇に出入りしている女だとは思いもしないだろう。


バレないように初対面のフリもしていたし。


遥香さんが鳳皇の女だと思われる可能性はかなり低い筈だ。


それか、あたしの存在を知っていて尚、遥香さんを狙う奴がいる……とか?


もしいるのなら、考えられるのは奴等、“D”しかいない。



だとしても、何故奴等が遥香さんを狙うのだろうか。


それに、何故鳳皇と関係している事を知っている?

中田情報……?


分からない。



考えれば考える程浮かび上がってくる疑問。


遥香さんを追っている奴等は一体何者なんだろうか。


まぁいっか。自分で考えるのは止めよう。



『──オイ、女は今何処にいる?』



奴等から直接聞いた方が早い。