「……なんだと?」


その声に十夜はゆっくりと顔を上げると、訝しげに煌を見た。


同じく他の三人も煌へ疑問の視線を投げ掛ける。


当然だろう。

凛音に行かせたら危険だという事ぐらい煌にも分かっている筈だ。


それなのに“行かせろ”と言うだなんて四人が不思議に思っても仕方ない。


けれど、“行かせろ”と言ったのは煌の言葉ではない。



「貴音がそうしろって言ってる。“凛音は一度言い出したら聞かない、だから行かせろ”って」



そう。

それは凛音の兄である貴音の言葉だった。


貴音は凛音の性格をよく理解している。


これ以上言っても無駄だと分かってるんだ。

だから“行かせろ”と言った。



『十夜!』


「……クソッ!」


舌打ち混じりにそう吐き捨てた十夜はグッと拳を握り締めると彼方に目を向けた。


「遥香に“雷の店に行け”と伝えろ」


「……分かった」


「陽、雷に電話して今何処に居るか聞け。店に居なかったら今すぐ店に来るよう言うんだ」


「わ、分かった!」


「……凛音」


二人に指示を出した十夜は溜め息を一つ零し、携帯の向こうに居る凛音を呼ぶ。


『十夜、聞こえたよ。雷さんの所に行けばいいんだよね?』


「あぁ。……凛音、くれぐれも無茶だけはするな」


『うん、分かってる』


「すぐ行くから待ってろ」


『うん、待ってるから早く来て』


そう言うと、凛音は早々と電話を切った。


「十夜、雷今から店向かうって!」


同時に電話を切った陽が十夜にそう報告をすると、十夜は切ったばかりの携帯を握り締め、


「壱、急げ」


険しい表情でそう言い放った。



 -客観的視点 END-