「ちょ、凛音、落ち着け!俺は何もしねぇよ!ただお前と此処で待ってるだけだ!」
両手と頭を器用に左右に振り、少しずつ壁へと後ずさっていく慎。
「慎、」
顔面蒼白になっている所を見ると、どうやら本気でビビっている様だ。
だけど仕方ない。こうでもしなければ喧嘩を止めにいけないのだから。
だから、慎。
「ごめんね?」
そう言うと、手に持っていた鉄パイプを勢いよく振り上げ、慎に向かって思いっきり振り下ろした。
「……っ」
室内に響き渡ったのは、コンクリートを叩きつけた打撃音。
鉄パイプを伝い、かなりの振動が右腕に伝わる。
それを堪えて、鉄パイプを持ったまま扉目指して走り出した。
「……っ凛音!待て!!」
騙されていた事に気付いたらしい慎があたしを呼び止める。
けど、もう遅い。
扉から飛び出ると、勢いよく扉を閉め、持っている鉄パイプを左右の壁の溝に引っかけた。
この扉は開き戸になっているから、棒で固定してしまえば開かない。
手前に引くタイプの扉だと意味ないけど。