袖を通すのはこれで二度目。
一度目の時も思ったけど、やっぱり着心地がいい。
まるで上半身全体を包み込まれているみたいだ。
「凛音ちゃん、可愛い」
「あ、ありがとう、壱さん」
相変わらずストレートな壱さんの言葉にかぁと顔が火照る。
「うんうん、ホントに可愛い~。りっちゃん食べちゃいた──」
「黙れ、変態」
「ぐはっ。……痛いけど良い!りっちゃんの愛の鉄拳が俺の腹に!」
お腹を押さえながらも嬉しそうに笑う彼方にぞわっと鳥肌が立つ。
……キモイ。
「……彼方ってホント変人になったよなー」
「陽ちゃん、変態じゃなくて変人って!」
「うん、変人」
「ひ、ひでぇ……」
彼方からすれば変態より変人の方が嫌なんだ。
どっちもどっちな気がするけど。
「オイ、そろそろ行くぞ」
「行くって?」
スタスタと先に玄関へと歩き出す煌にそう問い掛けると、
「お前が正式に凰妃になった事を下の奴等に伝える。零達が此処に居るのはその為だ」
代わりに十夜が応えてくれた。
なるほど。そういう理由なら納得。
零くんを見た時からなんで此処に居るのかずっと気になってたんだよね。
っていうか、伝えるって……。
なんか恥ずかしくない?
だって、それってある意味“十夜と付き合っちゃいました”宣言をしてるって事だよね。
て、照れる……。
「凛音?何赤くなってんだ?」
「へ?あ、ううん。何でもない」
陽に顔を覗き込まれ、誤魔化すように頭を振る。
必死に頭を振るあたしを見て、陽が「変な凛音ー」と言って笑った。


