Ri.Night Ⅳ


十夜の背中にはあたしと同じ二羽の鳳凰がある。


背中に二羽舞っているのはあたしと十夜だけ。


前回着た時は何故二羽なのか分からなかったけど、今はその意味が分かる。



──両翼。

背中の鳳凰は、“鳳皇”と“凰妃”。


だからあたしと十夜の特攻服にしか描かれていないんだ。




前回の暴走の時、あたしは“鳳凰”の意味が分からなかった。


あの時はまだ想いは通じ合っていなかったのに、十夜はあたしにこの特攻服を渡してくれた。


それを考えると堪らない気持ちになる。


“凛音、好きだ……。早く俺のモンになれよ”


紡がれた愛の言葉と、顔中に落ちてきた温もり。


あれは、夢なんかじゃなかった。





十夜の左袖を見つめ、その文字にそっと指を這わせる。


人差し指が触れるのは“両”という文字。


縦一列に並んだ文字の上をススッと滑らせていく。


両、翼、共、舞……。



“両翼共舞永遠鳳凰妃護誓 ”



心の中で呟き、その言葉の意味を噛み締める。



全てを読み終えた時、十夜の右手が左頬に添えられた。


「……っ」


同時に唇へと落ちてくる甘い温もり。


「とぉ……」


不意を突かれたあたしは十夜の名前を紡ぐ事しか出来なくて。


触れるだけの短いキスにクラッと目眩がした。


余韻を感じる間もなく離れていった唇は代わりにある言葉を紡ぐ。



「“両翼共に舞い、永遠に鳳凰妃を護ることを誓う”」