十夜の背中にはあたしと同じ二羽の鳳凰がある。
背中に二羽舞っているのはあたしと十夜だけ。
前回着た時は何故二羽なのか分からなかったけど、今はその意味が分かる。
──両翼。
背中の鳳凰は、“鳳皇”と“凰妃”。
だからあたしと十夜の特攻服にしか描かれていないんだ。
前回の暴走の時、あたしは“鳳凰”の意味が分からなかった。
あの時はまだ想いは通じ合っていなかったのに、十夜はあたしにこの特攻服を渡してくれた。
それを考えると堪らない気持ちになる。
“凛音、好きだ……。早く俺のモンになれよ”
紡がれた愛の言葉と、顔中に落ちてきた温もり。
あれは、夢なんかじゃなかった。
十夜の左袖を見つめ、その文字にそっと指を這わせる。
人差し指が触れるのは“両”という文字。
縦一列に並んだ文字の上をススッと滑らせていく。
両、翼、共、舞……。
“両翼共舞永遠鳳凰妃護誓 ”
心の中で呟き、その言葉の意味を噛み締める。
全てを読み終えた時、十夜の右手が左頬に添えられた。
「……っ」
同時に唇へと落ちてくる甘い温もり。
「とぉ……」
不意を突かれたあたしは十夜の名前を紡ぐ事しか出来なくて。
触れるだけの短いキスにクラッと目眩がした。
余韻を感じる間もなく離れていった唇は代わりにある言葉を紡ぐ。
「“両翼共に舞い、永遠に鳳凰妃を護ることを誓う”」


