意味ありげに笑う煌に眉を寄せながら、言われた通りに左袖を見た。
“両翼共舞永遠愛誓”
縦に並んだ八文字の漢字。
……りょうよくともまい?
何て書いてあるのかサッパリ分からない。
「“両翼共に舞い、永遠の愛を誓う”。そんなとこじゃね?」
「……っ」
煌の言葉に息が詰まった。
と同時に特攻服を持っている手に力が籠る。
“両翼共に舞い、永遠の愛を誓う”
心の中で呪文のように呟いた八文字の漢字の意味。
身体中に沁み渡っていくその言葉に次第に心が苦しくなってきた。
何て言い表したらいいのか分からない感情が胸中でぐるぐると渦巻く。
今、一つだけハッキリしてるのは、無性に十夜の顔が見たいっていうこと。
十夜の顔を見て、十夜の温もりを感じたい。
今すぐ十夜の元へ行きたい。
そう思った時にはもうソファーから立ち上がっていた。
「凛音?」
「行ってくる」
「ちょ……!」
持っていた特攻服を素早く着て寝室へと歩き出す。
そして、十夜が今着替えているという事も忘れてノックもせずにドアを開けた。
「十夜」
突然開けて驚いたのか、ドアを開けた時にはもう十夜は此方を振り返っていて。
けど、此方を見るだけで何も発しようとはしない。
あたしを真っ直ぐ捉える漆黒の瞳。
その瞳に吸い込まれるように、一歩、二歩、とゆっくり歩き出す。
既に黒の特攻服を身に纏っている十夜。
あたしが来る前に着替えを済ませていたのだろう。
特攻服姿を見るのは二度目なのに、胸の高鳴りは以前よりも大きい。


