「あの時、“近々分かる”って言ったのはあの日お前に伝えようと思っていたからだ」
「……伝えようと思ってた?」
何を?
「お前を凰妃に、と」
「……っ」
それって……。
「まぁ、お前は寝てたけどな」
「……あ」
そう言えばそうだった。
あの日、十夜と二人っきりが気恥ずかしくてビール飲んだんだ。
で、寝てしまっていたと。
「その節は……あはははははは」
十夜の冷たい視線に耐えれなくなってゆるりと視線を外していく。
十夜、まだ根に持ってるの?
いや、まぁ、寝たあたしが悪いんだけどさ。
「着替えてくる」
「へ?」
突然そう言った十夜が返事をする前に寝室へと歩いていく。
え?何?もしかして怒ったとか?なんで?
寝室へと消えていく十夜に何も言えず、ただ見ているだけ。
どうしたらいいのか分からずに黙り込んでいると左右両方からクスクスと笑い声が聞こえてきた。
いや、クスクスなんて可愛らしいものじゃない。
明らかに笑いを堪えている様な声だ。
「アイツ、今更何照れてんだか」
笑いすぎたのか眼鏡を外して涙を拭う彼方。
「十夜可愛いー」
「十夜はああ見えて照れ屋だから」
陽と壱さんは十夜が消えていった寝室の扉を一瞥しながら笑っている。
何が何だかさっぱり分からないあたしはただ首を傾げる事しか出来ない。
「凛音、左袖見てみろよ」
「左袖?」


