脳裏に浮かびそうで浮かんでこない光景にモヤモヤしながらも手渡された紙袋を開封すると、
「……っ、これ……」
袋の中には黒い布。
それが何かなんて広げなくても直ぐに分かった。
震える手でそれをそっと取り出す。
「特攻服……」
取り出したのは黒の特攻服。
震え続ける手でゆっくりと広げると、背中には見覚えのある二羽の鳳凰がいた。
優美な両翼を大きく広げ、まるで舞っているかのよう。
見るのは二回目なのに、初めて見る気がするのは何故だろう。
「それはお前のだ」
「……っ、」
「袖、見てみろ」
「袖?」
服を左手に持ち、右手で垂れ下がっている袖を掬い上げる。
「……っ」
これ……。
目に飛び込んできたのは以前無かった文字。
「“鳳皇八代目総長 片翼 鳳凰妃 東條 凛音”。……鳳凰妃……」
「“鳳凰妃”。知ってるだろ?」
「……うん」
知ってる。
なりたいと願って、願って願って願って。
そして、諦めたもの。
“鳳凰妃”
それは鳳皇である十夜の女という証。
それが今、カタチとなって手の中にあるなんて……。
信じられない。
「前の暴走の時言っただろ?次の時には入ってるって」
「十夜……」
言ってた。
“次の暴走の時には入ってる”
そう言っていた。


