容赦なく降り注ぐ貴兄の言葉。


その声は力強く芯のある声で、少しの迷いも見られなかった。



「………っ、」


ここにきて初めて滲んだ涙。


その涙が貴兄と優音の後ろ姿をいびつに歪ませ、ボヤけていく視界と共に足が一歩二歩と後退し始めた。


それはまるで二人を拒絶しているかの様で、余計に涙が溢れていく。



……あぁ。こんな気持ちだったんだ。

二人はこんな気持ちだった。


この締め付けられるような胸の痛み。

これが“あの時”の二人の痛み。



ふと浮かび上がったのは、あの倉庫での二人の表情(カオ)。


あたしを助けに来てくれた二人は心配そうな表情であたしを見ていた。


その表情に見え隠れしていたあの傷付いた表情が脳裏に蘇る。


貴兄と優音は、あたしと鳳皇が繋がっていたと知った時、こんな気持ちを味わったんだ。



信じていた人に裏切られたという、


この、胸を抉られる様な絶望感を。







「──獅鷹の総長ともあろう者が随分と熱くなってるな」


肩を小刻みに揺らして楽しそうに笑う中田は自棄に愉しそうで。


けれど、見方を変えれば貴兄を小馬鹿にしている様にも見えた。


だけど、



「熱くもなる。凛音から鳳皇を引き離そうとしてるんだ。失敗は許されない」



貴兄には効かなかったらしい。


貴兄は声色を変える事なく淡々と言葉を紡いでいく。



「それに……」


「……それに?」


「お前がけしかけたんだろう?」