ぽすんと腰を下ろすと、見計らったかのように手渡されたコップ。
顔を上げれば、壱さんが優しい笑みを浮かべてあたしを見ていた。
「このジュ-ス……」
手渡されたジュ-スに視線を落とすと、ポンッと頭に置かれた大きな手。
「凛音ちゃんの好きな梅ジュ-ス、切らした事ないよ」
そのまま優しく撫でられ、「いつ帰ってきてもいいようにね」と微笑んでくれた。
「ホラよ」
「な、なに!?」
突然真上から落ちてきた物体。
それは、あたしの大好きな抹茶あんこチョコレート。
「何でコレ……」
「そんなモンお前しか食わねぇだろうが」
いや、そうじゃなくて、何でこれがここにあるのか気になったんだけど。
「凛音ちゃんのって買い物の時煌が買ったんだよ」
右側のソファーへ移動する煌を横目に壱さんがこそっとそう耳打ちしてくれる。
煌があたしの為に……?
「……何だよ」
カチンとジッポを開け、煙草に火をつけながらゆっくりと背凭れへ背中を預けた煌が怪訝な顔であたしを見てくる。
「……ありがと」
「あ?意味分かんねぇ」
……嘘つき。分かってるくせに。
フイッと顔を逸らした煌は明らかに照れていて、少し耳が赤らんでいた。
「──凛音」
背後から不意に呼び掛けられ振り返ると、そこには十夜の姿。
声を掛ける間もなくスッと紙袋を差し出され、それを受け取った。
……あれ?前にもこんな事があったような……。


