「零、用意が出来たら出てくる。準備しておけ」


「分かりました」


零くんに一言そう言って、あたしの手を引いて再び歩き出す十夜。


十夜とあたしを先頭に、鳳皇幹部が二階に向かって歩いていく。


周りを囲んでいた鳳皇メンバーはあたし達の速度と比例するように道を開いた。



すれ違い様に笑いかけてくれる皆。


ハイタッチをしたり、手を振り合ったり。


皆の笑顔が本当に嬉しくて泣きそうになった。





「気をつけろよ」

「うん」


目の前には二階へと繋がる階段。


……最近階段踏み外さないんだけどな。


そう思ったけど、言ってもきっと一人では上がらせてくれないだろうから甘える事にした。





「凛音ちゃん、おかえり」

「零くん!」


人垣が割れ、姿を現したのは零くんと各傘下の総長、副総長様方。


流石総長クラスになると存在感が違う。

一気に場の雰囲気が変わった気がする。



「零くん、皆、一昨日はあり──」


「凛音ちゃん、お礼なんて言わないで。俺達は“妃”を取り戻しに行っただけ」


「“キサキ”?」


零くんの言っている意味が分からず、コテンと首を傾げる。


すると、零くんはクスクスと笑いながら「後で分かるよ」と言われた。


小さく笑う零くんは相変わらず爽やかで。


あぁ、癒されるなぁと思った。


やっぱり壱さんの弟だ。


同じ空間に居るだけで落ち着く。