「凛音、先乗ってろ」


「え?あ、うん」


十夜に促され、遥香さんにもう一度頭を下げて車に乗り込む。


前屈みで一番奥まで進むと、座席にぽすんと腰を下ろした。


「お腹すいてきちゃった!」


此処へ来た時とは反対に気分は上々。


一人だったら口笛を吹いてるぐらいだ。



「りっちゃん何でそんなに機嫌いいんだ?」


「さぁ?何でだろうね」


彼方の問い掛けにとぼけていると十夜が車に乗り込んできた。



「凛音」


隣に腰を下ろした十夜があたしに右手を差し出す。


その手にそっと左手を乗せるとギュッと強く握り締められた。


手のひらから伝わる十夜の温もり。


その温もりに、あぁ、十夜が近くにいるんだ、と実感した。


ずっとこの温もりを感じていたい。


隣で、ずっとずっと。


永遠に──…












『──十夜、時間が空いたら電話して』


車に乗り込む直前、十夜が遥香さんにそう言われていたなんてあたしは知る由もなかった。