「……っ、貴兄!優!!」


中田に言えないのなら、二人に言うしかない。


他人事のように背を向けている二人に向かって力一杯叫ぶ。



「貴兄!やめて!!」


「……っ、凛音!!」


「貴兄!!」



……お願い。お願いだから行かないで。


鳳皇と真っ正面から勝負したら、きっと軽い怪我では済まされない。


もし、大きな怪我でもしたらあたしは、


あたしは……!



「貴兄!優!!」


二人の元へ行こうと足を一歩前へ突き出し、両腕に力を込めた。


だけど、どんなに頑張っても慎に押さえ付けられていて、前へは進めない。



「貴兄!お願いだからやめて!貴兄!」



「……っ凛音、無駄だ!」


「慎、離して!!……貴兄!お願い行かないで!貴兄!!」



暴れるあたしの二の腕に慎の指が容赦なく食い込んでいく。


骨まで響く程の痛み。


だけど、興奮状態に陥っているせいか、それほど痛みは感じない。


それよりも。


それよりも、胸の痛みの方がずっとずっと痛い。



痛くて痛くて痛くて。

このまま張り裂けるんじゃないかって思うほど痛い。