Ri.Night Ⅳ


「……っ」


窓に頭を預け、移りゆく景色をボーッと眺めていると、不意に頭に大きな手が乗せられた。


「壱、さん……?」


振り向けば、いつもと変わらない優しい笑顔があたしを見ていて。


けれど、その笑顔を見れたのはほんの一瞬だけだった。


運転中だからか、すぐに正面を向いた壱さん。


けど、頭に乗った手はそのままで、数回優しく撫でた後、その手は元の位置へと戻っていった。



壱さん……。


何も言わずに頭を撫でてくれたのはきっと壱さんの優しさ。


壱さんは鋭いから、あたしの考えてることなんてお見通しなんだ。


助手席に乗りたいと言った時も、そして今も、壱さんはあたしの気持ちを汲んでくれた。


口数は決して多い方ではないけれど、向けてくれるその優しい笑顔にいつも助けられる。


壱さんが笑ってくれるだけで癒されるんだ。




「バーカ」

「ぅわっ……!」


突然首を絞められて身体がのけ反る。


「ちょ、苦しい……!」


降参の意味を込めて巻きついている腕をバシバシ叩くと、


「なんだ、弱ぇな。もっと修行積めよ」


ハッと乾いた笑いが耳元で聞こえ、するりと腕が外れた。


「馬鹿煌!何すんのよ!?」


「煌ばっかズルィー。りっちゃん、俺もぎゅー」


「ちょ……!寄ってこないで!」


「彼方、重てぇ!!」


急に賑やかになった車内。


遥香さん達がいる事も忘れていつものように騒ぎ出す。


首を締められた時はムカついたけど、後々考えればあれは煌なりに励ましてくれたんだと思う。


煌は鋭いから。

ううん、煌だけじゃない。彼方も陽も。


みんな気を使ってくれた。


優しすぎるよ。ホント。