「十夜さん、助けに来てくれてありがとうございました~」
「まさか十夜さん達が来てくれるなんて思ってもいなかったです」
「遥香がピンチの時いつも助けに来てくれるから今回ももしかして…なんて思ってたら本当に来てくれたんでビックリしました!」
驚く程のマシンガントーク。
十夜の声どころか遥香さんの声さえ聞こえない。
余りの勢いに彼方と陽も邪魔出来ないと思ったのか、いつもの騒がしさがなくて。
こんな時こそ騒いで欲しいのに、と願うあたしはホント嫌な女だ。
「十夜と遥香さんって産まれた時から一緒なんですよね~?」
こんな事を思っている間もずっと途切れる事なく喋り続けている葵さん。
その内容は十夜と遥香さんの事ばかり。
あぁ、葵さんは本当に遥香さんが大好きなんだな、と素直に感心した。
十夜を好きな遥香さん。
葵さんはその気持ちを知っているからこそこんな風に十夜と遥香さんの仲を取り持とうとしているんだ。
友達思いの良い人。
「もう、遥香も喋ってよ~ホラッ!」
葵さんに悪気はないと思う。
だって、あたしと十夜が付き合ってる事を知らないのだから。
遥香さんも知らない。
もしそれを知ったら遥香さんは……。
そう考えるだけで胸がキュッと苦しくなった。
片思いの辛さを知っているからこそ遥香さんの前では素直に喜べない。
どうしても後ろめたさが勝ってしまう。
かと言って、十夜を渡したくない。
もう、あの手を離したくない。
色んな感情が胸中で渦巻いて。
あぁ、もう、頭の中がグチャグチャで何が何だか分からなくなってきた。


