「乗れると言えば──」
「じゃあお願いします!遥香!良いって!」
「葵!」
一緒に帰る気満々の葵さんに流石の煌も何も言えないのか、ただただ苦笑するだけ。
遥香さんの友達だから邪険には出来ないのだろう。
「とお──」
「帰るぞ」
何か言いたそうにしている煌を横目で一瞥すると、十夜は後部座席のドアに手を掛けた。
「十夜さん、ありがとうございます!ホラ、遥香、十夜さんの隣行って!隣良いですよね?十夜さん」
「ちょ、葵!」
十夜が了承した途端、パァと笑顔になった葵さん。
返事を聞く前に遥香さんの背中をグイグイ押し、十夜へ近付けようとする葵さんは何だか楽しそうで。
逆に遥香さんはどうすればいいのか分からず、困惑した表情で十夜と葵さんを交互に見ていた。
そんな中、十夜の視線があたしに向けられる。
交わる視線。
同時に胸中がざわついて。
「り──」
「……っ、あ、あたし助手席に乗りたい!煌席代わって!」
気付けばそんな事を口走っていた。
「はぁ?」
当然煌は素頓狂な声を上げ、訝しげな視線を向けてくる。
「い、いいじゃん!あたし壱さんの隣に乗りたいの!」
「お前なぁ……」
「煌、良いだろ。凛音ちゃん、隣おいで」
「壱さん……」
にっこりと微笑んでくれた壱さんにホッと安堵の溜め息を吐き出して助手席に乗り込む。
「足元気を付けてね」
助手席のドアを開けてくれた壱さんは、乗りやすいようにドアを持っててくれた。