「はるるんはもう帰んの?」
「……彼方くんもその呼び方止めてよ」
は、はるるん?
何だ、その呼び方は。
恥ずかしいのか、ほんのりと頬を染めている遥香さん。
そりゃ恥ずかしいだろう。
あたしだったらソッコー取り消して貰う。
「で、どうなんだよ。帰んのか?」
「……んー、葵、どうする?」
煌に問い掛けられた遥香さんは葵さんに答えを委ねた。
「あたしはもう買いたい物買ったしいいよ?遥香は?」
「私もいいかな」
「じゃあ、今から下の奴等呼ぶから待ってろ」
二人の言葉を聞いて煌がポケットから携帯を取り出した。
「あ、あの……!」
「ん?」
電話を掛けようとした時、煌を呼び止めた葵さん。
「送ってくれるのってバイクですか?」
「そうだけど……」
「すみません、私バイク怖くて……」
「マジで」
申し訳なさそうにしゅんと肩を落とす葵さんを見て煌が困惑気味に声を洩らす。
煌がチラリ、と横目で十夜を見た。
それにつられてあたしも十夜を見る。
十夜は無言。
何とも言えない空気が漂った。
「あのー、一緒に帰っても良いですか?」
……え?
「……あ~」
「……車、もう乗れません?」
「ちょ、葵……!」
葵さんの申し出に煌が言葉を濁し、遥香さんが葵さんの慌てた様子で腕を引っ張る。