「聞こえなかった?どっか行ってって言ったの」
「テッメェ……!」
掴んだ男の腕に力が篭る。
あたしを見る男の目は怒りに満ちていて。
その瞳は最早女に向けるものではなかった。
けど、そんな睨み、あたしには効かない。
「あたしはそこら辺にいるか弱い女じゃないの」
そう言うや否や掴んでいる手を思いっきり捻り上げる。
「大人しく行って。分かった?」
「……っ」
分かった、とは言わない。
けど、あたしは男の腕を離した。
男の瞳が“分かった”と言っていたから。
「……チッ」
離した途端走り去っていく男達。
「はぁ……」
やっと消えてくれた。
「オイコラ」
「いだっ!」
溜め息を吐いた瞬間、登頂部に落ちてきたのは煌の鉄拳。
余りの痛さに登頂部を押さえて蹲る。
「お前さっき兄貴と“危ない事しない”って約束したばっかじゃねぇのかよ」
「……ゔっ」
痛いところを突かれ、言葉が詰まった。
だってさ、あたしが言うのが一番いいと思ったんだもん。
煌もそう思ったんだから止めなかったんじゃないの?
「……あの」
むぅ、と不貞腐れていると、背後から呼び掛けられた。
振り向くと、後ろにいたのは遥香さんと葵さん。
この姿で遥香さんと逢うのは二度目だけど、葵さんとは初めてで。
なんか、妙に緊張する。


