「りっちゃん、俺も抱擁!」
「分かった。お別れの抱擁ね」
「え、それはヤダッ!!」
どっちよ、ったく。
差し出した両手を勢い良く引っ込めるM男彼方にハァと深い溜め息。
こんなやり取りをしているけど、実はまだ貴兄と優音と三人、団子状態のままで。
貴兄が離してくれなきゃ優音もあたしも身動きが取れない。
そんな中、
「──凛音に怪我させたら許さねぇ」
耳元で優音の低い声が聞こえた。
凄みを感じるその声は優音の心情を表しているようで。
あぁ、心配してくれてるんだな、と思った。
「怪我なんてさせねぇよ。凛音は自分の身を挺してでも護る」
十夜……。
十夜の真剣な声色とその言葉がじわりと心に沁みていく。
少しずつ温かくなっていく心に自然と笑みが零れて、今すぐ十夜に抱きつきたい衝動に駆られた。
「怪我させたらボコボコにしてやる」
「ちょ、優音!?」
いきなり何を言い出すんだ、この子は。
顔を上げれば優音の目はあたしの後方へと向けられていて。
下からじゃハッキリと見えないけど、その真剣な瞳からは冗談なんかではないことが窺えた。
「じゃあ、これから先お前が俺に触れる事は無いな」
十夜にしては珍しい笑い声。
どんな表情をして言っているのか気になったけど、振り返らなければ見る事が出来なくて。
少し、今のこの体勢を恨めしく思った。


